死屍累々の晩夏

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焼けたアスファルトの上に仰向けにポトリと落ちているのは
力尽きたクマゼミだった
触ろうとすると大きく鳴いて飛び立ち驚かすのもいるが
このクマゼミは、もうそんな力も残っていないようで
呼びかけに答えるようにわずかに足を動かした

灼熱の炎天下で君は燃え尽き
ただひとり看取る者もないアスファルトの上で
孤独に果てようとしていた

よう頑張ったな

車や自転車に踏みつぶされないように
またアリに襲われないように
まだ意識のある君に残された時間の
尊厳を守れる場所を探した

手のひらの中の君はすでに枯葉のように干からびて軽く
それでも君は確かにまだ生きていた

君の脳裏には楽しかった土の中や
地上に出てからのめくるめく激動の一週間のことが
走馬灯のように回っているのだろうか

蝉の声がまた一斉に上がり
わたしを覆い尽くす

日陰のコンクリート塀の上に君を置いた

君の目にわたしが映っているかどうかはわからない
余計なことだったのかもしれないが
君の発する尊厳にわたしは動かざる得なかった

君の尊厳に関わったとは思っていない
わたしは君の尊厳に打たれただけなのだ

嗚呼、何故だか
君達の最後をよく目にする

空への片道切符を手に
炎天下に果てた君達の骸ばかりが目に入る

積乱雲が湧き上がり
燃えるような熱風とすべてを焼き尽くす熱線の下で
死屍累々の現実から目を離せない

ただ圧倒されるばかり・・・

比較するのも憚れる
敵うはずもない

死屍累々の御魂を前に
わたしはあらゆる言葉を飲み込む

そして、また燃え尽きた骸を見つける
そこにある尊厳から
決して目をそらしてはならないのだと思いながら



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この記事へのコメント

ママジャム
2019年08月15日 03:14
感動の一編です。