五分後の俺の世界

熱と光と湿度の濃密なスープ 熱帯のジャングルへの歓喜もいつしか失せて 戦果なき行軍の連日にやがて方向も目的も見失い 朝も昼も夜も同じような鬱蒼とした視界の中を 倦怠と疲労を引きずりながらただ黙々と歩いていた このジャングルこそは徒手空拳の非力な反逆の徒にも 我が身を隠し乾坤一擲ゲリラ戦を挑みうる逆転の地ではなかったか …
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死屍累々の晩夏

焼けたアスファルトの上に仰向けにポトリと落ちているのは 力尽きたクマゼミだった 触ろうとすると大きく鳴いて飛び立ち驚かすのもいるが このクマゼミは、もうそんな力も残っていないようで 呼びかけに答えるようにわずかに足を動かした 灼熱の炎天下で君は燃え尽き ただひとり看取る者もないアスファルトの上で 孤独に果てようとし…
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嵐を呼ぶ朝焼け

資本主義の大津波がくる 良くも悪くも過酷な経済の競争原理が 政治を弄ぶ未熟国家を粛清する 国家の弱点が無様に露呈し 混乱と愚劣に衰運の兆しを認めるとき 獲物を探し求める国際資本からもはや逃れる術はない それこそは資本主義の必要悪であり 有能な者が生き残り愚かな者が淘汰される必然である 来い この…
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或る編集者の本を読んで

饒舌は脆弱であり、所詮沈黙には敵わない なぜなら語彙を尽くし記憶とロジックをを駆使して濃密な紙面を意識すればするほど、彼がすでに社会的成功を収め今や出版業界の異端児かレジェンドであるとしても、人の才能にたかり詐欺まがいに忍び寄り道化師の如く媚びへつらい焚き付けて、まだ無形のものとして才能ある人の内面に揺蕩うものから金になるエキ…
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希望の国のエクソダス

数千年の時を経て大陸の端っこに吹き溜まる下種 それらが繁殖して下衆の村が下衆の国家になっても 21世紀の情報テクノロジーによってより一元化された世界が訪れても 半島に群生する劣種の悍ましさと喧しさは哀れにも微塵も変わることはない 馬鹿は馬鹿、滓は滓 関わるだけ時間の無駄であることは 我が半生を顧みても噛みしめた絶望の…
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沢蟹くん

迷い込んだ沢蟹が研究室の廊下の隅を懸命に走っていた もうみんな帰ってしまって出口のない廊下を いったいどれだけの時間彷徨ったことだろう ぼくはあまりにも突飛な君の出現に驚き また瞬時にすべてを理解した 君の前にある完全な絶望を打開するのは ぼくしかいないのだ ぼくは逃げようとする君と対峙し どうしても…
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〈両国橋〉バス停

わたしを取り囲む景色のすべては そのずっと奥におられる尊いどなたかの わたしに投げかけられた暗喩である そして わたしを取り囲む景色のすべては わたしが作り出したわたしの投影である わたしは暗喩の意味するものを考え 投影されたわたしの何であるかを考える 投げかけられた謎に分け入り 分け入るわたしがま…
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これが俺のデスクだ

世界の中心で〈のどごし生〉を飲む 俺のデスクで「旨い」と叫ぶ 標高233mの頂きで 思い描いた人生の頂きとの違いを考える 人間の想像力など 街の背後に緩やかに控える小山にすら その豊かさの前にたちまちにして けし飛ぶ 海がひとつであるように 大地もまたひとつ 世界を旅して 百を見聞し一を知る奴もいれ…
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周防 Earth,Wind & Fire

20ポンドの肉を削ぎ落とす 周防大地のヤスリにかける 肉に染み込んだ屈辱や怒りや倦怠が 灼熱の太陽に焼かれ、ロウのように溶け出す 血と汗でどろどろになりながら 周防大地に我が身を削る 本当に必要なものはこの肉体だけなのだ 一個の肉体から拡散した人生は やがて、いや、常に、一個の肉体に収斂される …
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魅せられて

照りつける太陽の下 その青紫色のあまりの艶やかさに 思わず近いてみると 大きなアサガオの花弁の中に 魅惑的なもう一つの光源を見つけた どれだけ見ても 内側から光っているとしか思えない パラレルにいろんな世界があってもいいし あるような気もする 現に、ここに 明日には閉じてしまうもう一つの世界への入口が…
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最強の肥料

肥料が人を創り人生を決定する 人間も草木も適切で潤沢な栄養こそがすべてを決定する 体に必要なタンパク質や脂肪や炭水化物 etc.に加えて 心や精神の成長、深化、更に人生の発展、成功となると その必要な要因や関係性は無限大であり不可知と言わざる得ない それでも、 自ら意思的に選択し得る範囲の 自らが選択した構成要素が…
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男は黙ってサッポロビール

古来より、男というものは常に孤独の中に生きるものであったと思う 孤独に養われ、孤独に向き合う者こそが男なのだ 華やかな、あるいは賑やかな人間関係など例えば季節外れのクリスマスツリーのような 人生の核心と何の関係もない無意味な虚飾にすぎない 男の真の人生はいつの時代も、どんな人生であっても 沈黙と孤高の中にしかない …
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宝島

爽やかな初夏の朝 スティビーワンダーの曲の流れるがらんとした茶店で 窓の外の妙に垢抜けて見える街を見ながらアイスコーヒーを飲む この時期にしか感じられないツツジの花のような つかの間の幸福感 高く突き抜けた青空と 網膜の奥の奥の小部屋にまで差し込む力強い光 窓という窓が開け放たれ 懐かしい南国の夢の匂いを乗せた風…
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人はパンのみに生きる

イエスも余計なことを言ったもんだ 人はパンのみに生きるにあらず、などと 無用な挑発をして煩悩を目覚めさせ 苦しみを増幅させただけではないのか 愛とか善とか美とか真理とか あるいは神とか 希望も夢も幸福も喜びも 観念的な言葉を持て遊びこれに囚われ 表象の浅いところでわあわあやって 何ひとつ核心に迫れないま…
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三味線とハードボイルド

三味線のバチさばきに セザンヌの絵筆のタッチを見る 旋律を奏でず 描線を引かず この世に蒸留したような甘っちょろい旋律があるわけもなく これが真実の形ですと疑いもなく引ける描線もない それこそがヘミングウェイが足繁くルーブル美術館に通い セザンヌの絵から学び得たハードボイルドの極意だ 人の心理を事細かく書…
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具象か抽象か

人は具体的なイメージを夢や希望として持つ時 それがより現実となりうるとは物の本でよく読んだし これまで生きてきて実感もしているところだ よく考えてみるとそれは至極当然のことだ なぜなら、夢や希望とは具体的なものだから 人はみな、こころの小部屋にひとつの具象画を立て掛けている それが何で、どれだけ鮮明であるかが違うだけ…
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イデアとメタファーを考える時

雨には打たれろ 傘は必要ない 傘を捨てた時 雨は頼もしい友となる 守るという行為は退屈だ 守るという行為は 最も創造性に乏しい つまらない行為だ 攻めるという行為も 守るという行為よりはマシだが 似たようなもんだ 卑小で貧相で くだらない そんなもん 全部時間の無駄だ 雨には打た…
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令和という調べ

高貴な鈴の音を聞いたような気がした しばらくは何故そう思ったのか分からなかった 分からないまま、 「令和」という新しい年号に 心のまだ分け入ったことのない奥の闇から 「リンッ」 という密かではあっても、どこかで、ずっと 待ち続けていたその音を聞いた気がした そのわけの一つが今、 ふっと、降りてきた 「令…
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平成というフラッグ

平成の初日、 31年前の俺は、前の日、流川で夜遅くまでしこたま飲んで、 そのまま歓楽街の中にあるカプセルホテルに泊まっていた 狭いカプセルの中で目が覚めると、ほぼ反射的に アルコールによって多少混濁した不愉快な感じを押してテレビをつけた そこにはあの図柄 小渕官房長官が平成の色紙を示し 新しい年号を告げていた …
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春はあけぼの

ようよう白くなりゆく、山ぎは少しあかりて、 むらさきだちたる雲の細くたなびきたる 夏は夜、秋は夕暮れ、冬は早朝・・ That’s right 春はあけぼの、秋は夕暮れ 長い夜が明けていき 長い昼が暮れて行く 今日の日の出時刻 06:08:47 AM 今日の日長 12h 15m 3…
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行け!貴景勝

鶴竜に勝ったが、 だからどうということもない 関脇だというが いつか見たようなデジャヴな景色 時間の無駄なのだ 苦痛なんだよ この息苦しさから逃れるために 水底から水面に浮き上がらんともがくように 上を目指す 大関取りと囃すまわりが まとわりつく藻のように鬱陶しい 相撲という国技に惚れて こと…
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AM 4:00 12℃

じっとしてろよ それができなかった 春が来たら来たで つかの間浮かれたあとには エネルギーの奔流に埋没し 又、別の苦しみにのたうつのだが 寂光の下も、数ヶ月を過ぎると もう一分一秒がいらついてくる 停滞した時、くすぶった色彩 曇天の下にこじんまりと収まる小世界 慣れたとは言え、身の縮まる冷温、北風…
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鈴原冬二・名言解釈

「オレは、感覚も意識も麻痺しているけど倒れることはないんだ、意志に支配されているからだと思うんだけどね、その時、獲物に追いついてやるぞっていう意志が、オレより大きくなっているわけさ、オレはもう完全にオレの意志に同化しているんだよ・・」 何かに同化するという意志、または、何ものにも同化しないという意志のどちらかがなければプライドは安…
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鈴原冬二 ・名言録

ホモ・サピエンスの原点である直立二足歩行の意味 適者生存という非情で美しい摂理故に求められる真の自立の意味を問うとき もう一度、村上龍の「愛と幻想のファシズム」を読んでみようと思った ハンターでありカリスマ・サバイバリストである主人公の鈴原冬二なら 混迷する世界とどう向き合うのか 久しぶりに読んでみて、冬二の実家や家族…
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崇高なる直立二足歩行

数百万年前、直立二足歩行を始めたホモ・サピエンスの祖先 直立して大地を歩くことがとてつもない意味を持った 海の中にいた時も 沼と陸地の間にいた時も 空を飛んでいた時も 密林の木の上にいた時も 自我に目覚め自らの時を刻むことはなかったのだ いつしか遠い昔の原点を忘れ あらゆる物質と情報とテクノロジーに武装された都市…
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質実の力

質実とは、デジタル大辞典によると 飾りけがなく、まじめなこととある たぶん、〈実存〉或いは〈今ここにあること〉に 通ずるのではないか 飾りに意味を認めず 今ここにあることに覚悟を持って誠実に向き合う 踏み込んで解釈するなら 質実とは一つの哲学を内包した 力強い指針だと言える ならば飾りとはなんだろうか …
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狂気にも似た正気

腹の底から笑えること 忘我の境地で没頭すること ギラギラすること ワクワクすること ウキウキすること そんなものは いつまで待ってもやって来やしない どこまで行ったってありゃしない どこにも隠れちゃいない どこにもなっちゃいないし どこにも落ちてはいない 人や都市や運命や 神や仏にすり寄っても …
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アロハを着た狩人

村上龍の「愛と幻想のファシズム」をもう一度読んでみようと思うのだ 何故なら俺がハンターになったのはこの本を読んだからだ それ以来多くの言葉を撃ち抜いてきたが 今は狩猟というよりは採集に近い 狩るつもりが、狩られ続け いつの間にか辺境の採集生活に落ちぶれた いいのかい、こんなんで 大沢在昌が「北の狩人…
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完全無欠の絶望

「完全無欠の絶望」と言ってみる 今の気分をわずかに表しているようで 一人苦笑い 完全無欠なのに どこか間が抜けていて明るいではないか 地球の資源を食い尽くし繁殖する70億のおぞましい生物 その人間の作った社会も文明も文化も 歴史も科学も哲学も芸術も そして、言葉そのものにも たいして意味があるとは思えな…
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地獄の正夢

形骸化した大晦日と正月 形骸化したこの国のすべて 紅白歌合戦や特番の擦り切れたようなネタの繰り返しも 最早ここに極まれりといったほどの 水爆級の亡国と廃墟があるばかり 365日、24時間、国境無し リアルタイム、デジタル社会、 ITにAIににSNS、 ネットはコンテンツに埋め尽くされ エンターテイメントはいつ如何な…
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動乱の予感

ホワイトクリスマスは聞こえない クリスマスイヴの夜に真綿のような真っ白い雪が深々と降り積もることを願い 遠くかすかなソリの音と鈴の音に耳を澄ます子供らは今でもどこかにいるのだろうか 21世紀も早18年の歳月が経ち 平成の年の瀬も今年が最後となる 聞こえるものは軍靴の響き 戦後73年という平和という名の鬱屈が …
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堕落論

日一日と日が短くなり、闇がひたひたと覆い尽くし 寒さが身体の芯まで深く喰い込み 見上げる気力も失せた曇天の冬雲は厚みを増し、北風は強くなる 夏の余熱や残照も消えた晩秋から冬至に至るまで どれだけ年輪を重ね繰り返してきても 覚えのない敗北感のような痛みと憂鬱から逃れられない その敗北感のような痛みと憂鬱は年を追うごとに…
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ネオよ、オラクルよ!

ITの進化浸透によって、より一元化した世界が ビックデータを刻々と取り込み深化成長するAIによって 支配され簒奪される 株式市場・債権市場・商品市場・為替市場・仮想通貨・・・ Amazon・Google・Facebook・Apple・・ リアルタイムで可視化した各種経済指標の意図的なコントロールはもちろんのこと 政治…
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サンライズ・Sunrise

2018・11・28 , 日の出時刻 06:55:57 AM 朝早くからやっている街はずれの coffee shop に行く途中 港の先の海の彼方から、今まさに昇ろうとしている太陽と出くわした 真っ赤な大玉が羽衣のように雲をまとい、海の向こうに神々しく立ち昇るその姿は 思わず足を止めて見入ってしまう「希望」以外の何もの…
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ザイルを繋げろ

漆黒の闇に覆われた新月の夜 冬の星座群が冴え冴えと天上に瞬く 底知れぬ鍾乳洞の穴でも覗いたような 天上の闇の彼方に落ちていく孤独と恐怖を思って戦慄する 地上からコウモリのように逆さになってぶら下がっているだけではないか 重力が己れの足から手を離したら 天上という奈落と無明に落ちるのだ 何と儚く、何と危うい「…
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歴史というキャンバスに彼らが残したもの

佐々木譲 「武揚伝」(上)(中)(下) 読了 戊辰戦争と一口に言っても、①鳥羽伏見の戦いから江戸開城までの天皇政府と徳川政府の戦争と、②中央政府の面目を備えた天皇政府と地方政権・奧羽列藩同盟との戦争と、③封禄から外れた旧幕臣の救済を目的とする士族反乱の先駆的形態である箱館戦争と三段階に大きく分けられる 奧羽列藩同盟において仙台…
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Bang・Bang・Bang

その最期が白色矮星なんて耐えられない 寂滅や終息じゃない ビッグバンを起こすんだ 急激なインフレーション その先は知るもんか 超新星爆発の大花火を上げて 豪快に無限大の拡散をするのさ 拡大なんだよ (細っていちゃダメなんだ) 拡大こそが人生の 生きていることの面白さじゃないか 息つく暇もなく前に突き進む…
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憂いなき月光

なんと明るい月だろうか まるで太陽そのもののように太陽を映しとり 得体の知れぬ闇に浮かぶすべての命の有限とその悲哀を 一点の憂いなき月光となって照らし出す 大きな喪失感に苦しみ、ふと何かにうながされ仰ぎ見る者に はっと打たれるような力強い光を燦々と降り注ぎ 慈愛を超えた励ましのような力を降り注ぎ 深い空洞を…
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真実という幻・ maborosi

或る日の早朝、東の空 ここにある質感は 言葉ですくい取ることはできない 自分を取り巻く状況の一つとして 時に情動を動かされつつも 人生を構成する一日の桝目からもこぼれ落ち 何処へともなく跡形もなく消えていく 人の一生も人類の歴史もその認識されるものは 遙か永劫の彼方にある恒星の瞬きを勝手に結んだ星座ほ…
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神話の世界

大江健三郎の「同時代ゲーム」を思い出した 数百年前、大きな歴史的動乱を経ての開拓時代、語り尽くせぬ刻苦の末にそれなりの富をも蓄えた小天地・桃源郷を築き上げたが、それも維新、開国、近代化、数々の戦争等、更なる歴史のうねりの中でその役割を終え、今は初秋の澄んだ大気と青空の下にひっそりと佇み、ここから送り出した多くの子供らの忘れ去られた…
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函館の朝

例えば村上春樹の「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」のように、二つの世界が何処かで結節点を持ちながらもパラレルにエキサイティングに展開していくことは可能だと思う 一つは肉体を持つ世界ともう一つは肉体を持たない世界。肉体を持つ世界が自分の現実世界であることは疑いようがないが真実の自分の世界であるかどうかはわからない 肉体は多…
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西郷という虚像

北方謙三 「黒龍の柩」(上)(下) 読了 久々に極上の小説を読んだ 北方謙三に改めて敬意を表する 西郷隆盛という男への疑念を北方謙三が明快に晴らしてくれた 俺もこの国の多くの人々も、今だにこの男に欺かれ騙され続けているのではないか 維新の三傑の一人であり、渋谷や上野の銅像に親しみ、「敬天愛人」の人、西郷どんとして今…
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since 1972

この珈琲チェーンの名前の下に〈since 1972〉 とあるのが妙に気に入っている おそらく創業年だろうし、創業明治元年とか屋号の下に表示することは老舗の商店など昔から別段新しいことでも何でもないが、since そして西暦というおしゃれな表現と1972年という年が戦後昭和の一番良かった頃であり、その頃の気分が字面から湧き水のようにコン…
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カルマが晴れ上がる時

心とは長い年月を経て沈殿した泥の堆積を底に抱える水沼の 水面のさざめきのようなものだ 夏の灼熱の炎天に焼かれ干上がった泥沼が ひび割れてささくれ立ち白い土埃となって風に舞う 心を失って尚そこにある意識が 端然としてそれを見ている 輪廻を経ても守り通したかった(わたし)は すでに跡形もなくその執着が何であった…
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秋に斬り込む

来た! やっと来た ついに来た それでも来た やっぱり来た 来たね 喝采! 嗚呼、喝采 カオスからコスモスへ 肉体から精神へ 解体から創造へ 行くぞ! この瞬間を逃せば一年は無惨な藻屑に帰す じりじりと間合いを詰め 渾身の一撃を振り下ろす チェスト~! …
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オデッセイ 6

気温28度の宵闇、東の空にあった満月が 余熱と水蒸気を過分に含んだ静寂の中を ずんずんと中空に高く昇っていく 薄い雲を刷毛で伸ばしたような空に星はなく 朧(おぼろ)がかる月と唯一南の空の雲の切れ間に赤く瞬く火星があるだけだ 月を見上げて語りかける 無粋なだけの猛暑もそろそろ終わるのかね そして次は何が始まるんだ…
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気温21度の狂気

何だこれは この清々しさはどうだ 連日の36~37度の釜の中で 鉢の底から水が滴るように脳味噌に氷結(市販の缶酎ハイ)をぶっかけてきた 煮えた脳漿に思考も泡立ち 悩む力もないが高揚もない 心許ない慣性というか惰性のみで日をつなぐ 暑いという言葉すらグツグツと泡をたてて蒸発してしまうような ただそれだけにすべて…
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オデッセイ 5

連日朝方の最低気温ですら27~28度という石風呂のような高温密室の中で 今朝はどういう訳か24度で、しかもひときわ涼やかな風がさやさやと吹いていた 空を見上げると、僅かに白んだ東の地平にオリオン座の恒星群が座礁した大型客船のように横たわり その上に鋭利でファンタスティックな三日月が怜悧な発光体として浮かんでいた 極端な猛…
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オデッセイ 4

焼け爛れた地表が尚冷めやらぬ midnight 南東の天上に他の百万の星とは明らかに違う異様な切々たる光彩を見た 無限奈落の時空の中で Mars、火星よ、君なのか 互いに太陽の周りを楕円軌道で回る地球と火星が 15年ぶりに大接近したオデッセイ 僅かなのか、遥かなのか その赤色は何故だか無性に懐かしく その…
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灼熱というバブル

多くの災害をもたらした豪雨が過ぎ去り 光と熱にむせ返る灼熱の夏がやってきた 過剰な性と過剰な精神 過剰な無知と過剰な無力が若さなら 豪雨も酷暑も若さも 過剰というバブルの一つに違いない バブルとは狂っているが 懐かしく魅力的だ 所詮、ビッグバンも地球の生成も生も死も バブルそのものだから 荒ぶる天…
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