アロハを着たハンター(レイモンド・チャンドラー牧場)

数日前にレイモンド・チャンドラーの「長いお別れ」を読んだ。

北方謙三を通じてのハードボイルドとの出会いは 閉塞・膠着・どん詰まりの涸れ井戸の底の住人にとって終の棲家を見つけたような光明であり癒しであり 井戸の底の暗闇から這い出る示唆に富むものだった。

観念の牢獄でくすぶる阿呆の目を覚まされてくれたと言おうか。
太宰治や三島由紀夫的不毛な観念のブラックホールから危うく助け出されたと言うべきか。

「わたし」というものをこねくり回して遊んでも そもそもそんなものは何処にもないのだ。
「わたし」とは行為のあとに残った轍であり 行為の影なのだ。
あえて問うならわたしとは肉と骨と血だ。 暴力・性行為・そして目的の為の行為のなかで その凄まじい摩擦・軋轢の中に痛みとして己の存在を実感する。
絶望に至る物語などどうでもいいのだよ。 すべては絶望から始まるのだ。

以来 ハードボイルド小説・ハードボイルド的生き方は私の一つのテーマとして大事にしている。
日本のハードボイルド小説も北方以外に少しは裾野を広げたいとも思うが まず原点を押さえることが大事だ。
第一次世界大戦後のアメリカに新しい写実主義の手法として登場したヘミングウェイら・・。
これはぼちぼち読んでいる。それともう一つ、推理小説の一ジャンル。これも大いに楽しみながら読んでみたいと思っていたが その手始めがレイモン・チャンドラーの「長いお別れ」になったと言う訳だ。

新しく村上春樹訳で「ロング・グッドバイ」が同じハヤカワ文庫から出ているが「長いお別れ」は清水俊二訳である。
まだ読み比べるほど暇じゃない。
この作品は1953年に刊行、チャンドラーの作品のなかでいちばん長編であり代表的傑作だそうだ。

はっきり言って中盤までは退屈だった。時代も私が生まれる前だし激しさとかスピード感に欠け まどろっこしさも感じた。しかし後半から一挙に面白くなった。終わりそうでなかなか終わらない。最後に意表を付く展開がこれでもかと連発する。 大いに楽しめる贅沢な一冊だった。満足です。
有名な主人公の私立探偵フィリップ・マーロウとも懇意になれた気分だ。
また会おうぜって感じかな。

確かに推理小説だが私立探偵のタフでクールな個性が前面に出ている。謎解きの面白さ以外に主人公の個性や描写にやはりハードボイルド全般に通じる心地よい感化力を感じる。 

 ちょいと疲れた心を解き放つ青い牧場を見つけたね。





ロング・グッドバイ
早川書房
レイモンド・チャンドラー

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長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-1))
早川書房
レイモンド・チャンドラー

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さよなら、愛しい人
早川書房
レイモンド・チャンドラー

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