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コインロッカー・ベイビーズ 3

ハシは無口なキクと違って中学高校と人気者だった。友達を作るのがうまかったし、ハシは誰にでも優しかった。キクは陸上競技で活躍したが、球技など他人と協力してゲームを進めるスポーツは全くできなかった。ハシが至福感を音に求めたように、キクは高校に入るとすぐ棒高跳びを始め、ある高みを越える自分を想像して、何かと溶け合おうとした 昔ガゼルから…
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コインロッカー・ベイビーズ 2

母親にコインロッカーに捨てられたという これ以上の悲しみの刻印があるだろうか 乳児院という施設に保護されて その手厚い施しによって奇跡的に生を繋いだ 里親に引き取られ、学校にも通わせてもらい、誰もと同じような家族も持った そこに偽らざる無償の愛を見つけて、それでなんとか大人にもなれた だが内なる精神の亀裂は広がる…
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コインロッカー・ベイビーズ

右を見ても左を見ても 何処を見ても 今やこの国は絶望的に幼稚なただのゴミ箱だ 民主主義とインターネット、スマートフォンのコラボの行き着く先は 愚衆政治、ポピュリズム、すなわち無残なゴミ溜めでしかない そのゴミ溜め資本主義と、これまたドン・キホーテのごとく幼稚で滑稽な 数週遅れの覇権主義国家中国の、国家資本主義との激突だ…
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渋沢栄一の若き日

大佛次郎「激流 渋沢栄一の若き日」読了 幕末・明治維新は自分にとってライフワークと言えるほどに魅力的な興味尽きない時代として付き合ってきたが、日本資本主義の父と言われる渋沢栄一の視点をたどる時、戸惑うほどに維新はまた全く違う色合いを帯びて見えてくる。だがそれは類い稀な彼の人間性や能力は言わずもがなだろうが、それ以上に奇跡とも言える…
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YesterdayとTomorrowの間

用事を済ませていつも早々に後にするこの街を今日は土曜日で暖かく、なんとなく歩いてみた。歩いているうちに昔よくきたビートルズの曲だけが流れるYesterday という名の老舗の喫茶店に寄ってみようという気になった。JRの駅こそ立派になったが、流川も本通りも中央通りも、八丁堀も大手町も紙屋町も、かつての輝きを失って、つまらぬ色褪せた街に…
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新春・初手

百田尚樹「幻庵」(上)(中)(下) 読了 新春に読むには相応しいものだった 大場への一手を夢見ながら、二線への這いのような日々がいつしかずいぶん長くなった。黙って打ちつなぐことに、ハードボイルドな苦味をそれでも楽しんできた。狭まりつつある盤面と、出来上がりつつある人生の苦み哀切を十分に味わった鉄壁の厚み この一局に…
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TULLY’s で初珈琲

もう大晦日の紅白歌合戦はやめた方がいい 裏番組のダウンタウンの「ガキの使い・・」もいつまでやってるのか テレビを軸にした国民的リセットのイベントはすべてやめてくれ テレビで芸人がはしゃぎまわる声だけが部屋に虚しく響くことに何の意味があるのか 年越し蕎麦も御節も年賀状も締め飾りもお屠蘇も初詣も福袋もやめてくれ 正月帰省ラッシュと…
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錦川 2

愛宕橋をさらに下ると川下の楠木巨木群を境に、今津川と門前川に分かれる。今津川の方に掛かる橋は、今津川橋、大正橋、寿橋、新寿橋、れんぼ橋、新れんぼ橋とすでに全部歩き、渡ってみた。ならば門前川の方も歩いてみないわけにはいかない。川上から門前川橋、愛川橋、門前橋と風に吹かれながら土手沿をゆっくりと下る 日々人生の答え合わせをしている…
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錦川

吉川広家の裏切りは単に関ヶ原の戦いの一事に留まらないと俺は思う。米子城から岩国三万石に封じられてからも、長州藩に対して表面上はどうであれ、防長二国の出口の蓋としてこれを監視し、徳川幕府に逐次状況の報告をし続けたと思われる。岩国藩は同じ毛利でありながら長州藩に対する面従腹背の裏切りを、幕末に至るまで二百五十年間し続けたのだ。岩国城の真の目…
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最古のステイタス 最古の哲学

自由とは何だ 他からの強制・拘束・支配を許さず 自らの意思によって自らを強制・拘束・支配し 強烈な自己規律に生きること 他からの解放であると同時に強烈な自己ファシズム 弱肉強食・適者生存の最前線 自己規律が不完全であったり完全な自己規律を以てしても敵わぬ時 瞬足 死はやってくる 真の自由と死は紙一重だ 村上…
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岩国城

ふと登ってみようと思ったのだ 正面にあるロープウェイではなく、たぶんあるであろう登山道から いつだったか遠い昔、ロープウェイで一度登ったことはあるが、麓の吉香公園の芝生やベンチで寝転べば まず視野に入る山頂の天守ではあっても、天下分け目の関ヶ原の戦いの際、毛利方でただ一人確信犯的に家康に通じた裏切り者の、しかも築城後七年後には一…
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世界の果ての焚火 2

この圧倒的な紅葉の炎の中に立つ時 俺もまた ありのままの炎になって 燃ゆる樹々と一つになった 慎ましく寡黙で控えめな樹々達の 落葉寸前に溢れ出る思いの丈だ 彼ら彼女らの渾身の思いの吐露であり 押し伏せてきた自らの情熱と計り知れない知性の発露だ でなければ この初冬の澄んだ空に映える深紅の炎が こうまでも美…
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世界の果ての焚火

焚火をしたいとずっと思っていた カタンと音がして薪が崩れ その刹那  何かを伝えようとしているかのように火の粉が舞い上がる 闇の中に赤々と光を放ち熱を発するそれは 刻々と微妙に姿を変えながら 必然なのか 偶然なのか かろうじてここにある世界の その中心に 確かな意思をもって燃えている アニミズムや先祖崇拝や八…
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快楽への挑戦

快楽とは高等なものである 酒池肉林がすなわち快楽ではない だがそれも立派な快楽である 贅沢がイコール快楽ではない それでも快楽の王道には違いない 快楽を語るには我が人生は あまりにもお粗末だ だが快楽が人生において高等なものであることは 多くの快楽に足を踏み外した俺としては ようやくたどり着いた答えの一…
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My Way 8

今 船出が 近づくこの時に ふとたたずみ 私は振りかえる 遠く旅して 歩いた若い日を すべては心の 決めたままに 愛と涙と ほほえみにあふれ 今思えば 楽しい思い出よ 君につげよう まよわずに行くことを 君の心の 決めたままに 私には愛する歌があるから 信じたこの道を私は行くだけ すべては心の決めたままに …
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明日はどっちだ

これと言った本が見当たらず、司馬遼太郎をずっと読み返してきたが、八月に「花神」を読んで、さすがにもう飽きた。九月に髙村薫の「冷血」を読むに至っては、いよいよ俺の列車は速度を落とし、気がつけば黄泉の国とか形而上的世界とか、妙な処に立ち往生していた そんな中で、王城夕紀の「青の数学」や赤松利市の「鯖」は面白かった。自分が出口を探してい…
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河平連山

15:00‘ 河平連山3号峰の大きな花崗岩の上で一息つき 持って来た菓子パンにかじりついた 河平連山4号峰から8号峰への縦走を残して 札木峠に引き返し下山することにした 漱石の「こころ」に登場するKの何処の山だったか登頂を目前にして下山し、それが彼の甘さを象徴するかのように女を親友である主人公に取られ、襖絵をわずかに…
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彼方からの応答

俺はあれから一週間経って 何かに憑かれたように 再び河平連山ハイキングコースに入って行った 途中 空中楼閣のような 出口のない集落に閉じ込められそうになりながらも 間一髪 危機を脱し(俺にはそう思えた) 形而下的世界に戻ってきた ふと目にした集落入口の道標に 軽い気持ちで立ち寄るつもりが 果てしない登り坂…
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黄泉の国のその先

彼岸某日の気まぐれな散策に ふと入り込んだ山道の 思わぬ懐の深さに 冷んやりとした怖れにも似た何かが 俺の全身を通り抜けた 聴き慣れぬ河平連山のハイキングコースのはずだったが 蛇行する山道をバイクで登り続けても どこかに行き着くという風でもなく しばらくすると峠らしきところに出た 何の標識もハイキングコースらしい…
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つかのまの風に

宇宙はビックバンからおよそ38万年後に晴れ上がる そして季節も ようやく晴れ上がる 頭の中も晴れ上がる 憑物が落ちたような 嗚呼 まさに 生きるという  生きているという そのことが 憑物の正体ではないか 彼岸の風景の中で 四苦八苦の重荷を下ろし 自らも透明な風となって 名もない公園の …
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世に棲む日々

豊穣と多様性への巡礼 疾走する精神 それ以外には何もないと 修験道のように山に取り付いた時もあった 矢尽き刀折れ どん詰まりの枯れ井戸の底で 形而上的な世界での格闘に まだやれることがある いやそれがすべてだと 闇と仮想現実の世界を 彷徨いもした いつだったか ようやく何処かでねじまき鳥が鳴き…
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灰塵の中から

濛々とたち込める灰塵の中から粛粛として出てくるおまえは誰だ 燃え盛る炎の中から艶やかに再生飛翔するのは火の鳥 混沌と絶望の灰神楽の中から 地獄と闇と慟哭の底から 虚無と虚飾と虚空の果てから 確かな足取りで 僅かに晴れ上がる視界の中に 現れ出て来るおまえは誰だ モーゼかキリストか マトリックスのネ…
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坂の上の夏雲

四苦八苦して登り詰めたその先は 窯の底のような身の置き所のない炎熱の室だった 圧倒的な火器に包囲されて もはや身を隠す塹壕も土塁もなく 絶え間なく掃射してくる機関銃に向かってもはやこれまでと 襤褸布のような肢体を晒してゆらゆらと死の行軍をする沖縄戦だった 長い夜と低い雲の冷め切った停滞の底から見上げる坂の上の夏雲は …
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My Way 7

どこかで だれかが きっと待っていてくれる くもは焼け 道は乾き 陽はいつまでも沈まない こころはむかし死んだ ほほえみには会ったこともない きのうなんか知らない きょうは旅をひとり けれどもどこかで おまえは待っていてくれる きっとおまえは 風の中で待っている どこかで だれかが きっと待っていてくれる …
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My Way 6

紋次郎のロマンティズム 紋次郎も子連れ狼の拝一刀も 高度成長時代只中の その果実に群れない 逆説的なシンボルでありヒーローだったとも言える 今太閤と言われた田中角栄が日中国交を回復し 日本列島改造論で国中が土建業者の槌音で沸き マルクス経済学が日本を席捲し学生運動が猛威を振るい それも挫折して鬼っ子の連合…
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My Way 5

歩きながら俺は考えた 何故、天涯孤独、無宿渡世の木枯し紋次郎に、たとえそれが架空の創作人物であったとしても(俺のなかの紋次郎で十分だ)、強烈な憧れと希望を見るのだろうかと 紋次郎とは何か 一つは彼の社会的立ち位置と彼の生き方、在り方という外的側面であり、もう一つは彼を彼たらしめる彼の内の何であるかという内的側面だ …
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My Way 4

乾いた空を見上げているのは誰だ お前の目に焼きついたものは 化石の街 愛のかたちが壊れたときに 残されたものは出発(たびだち)の歌 さあ今 銀河の向こうに 飛んでゆけ 乾いた空を見上げているのは誰だ お前の耳を塞がせたものは 時計の森 自由な日々が失われたときに 残されたものは出発の歌 さあ今…
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My Way 3

ステーキとワインでテカテカした額の艶福家の爺さんの 昔話も聞いてやれ 功成り名を遂げた男の 酒と薔薇の日々 多少のナルシズムは 長い風雪を経てきた今だから ご愛嬌だと思ってやれ フランク・シナトラやポール・アンカのような艶のあるいい男の 華麗なる人生の残照もいいだろう そんな男もまずいやしないがね …
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My Way 2

木枯し紋次郎 (中村敦夫 主演) 芥川隆行・エンディングナレーション 木枯し紋次郎 上州新田郡の貧しい農家に生まれたという 十歳の時故郷を捨て その後一家は離散したと伝えられる 天涯孤独な紋次郎が なぜ 無宿渡世の道に入ったかは 定かではない 時は移り YouTubeで上條恒彦の「だれかが 風の中で」を映像とともに聞…
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My Way

多くの賭場を渡り歩き いくつもの山河を越えてきた 長居をした宿場も有れば 早々に退散したところもある 四十一までは一所に懸命だったが その後は渡世の道に入った 何故その一所を捨て 渡世人になったのか 理由を並べれば山ほどあるが それは誰にもわからないと言ったほうが正確なのかもしれない それから多く…
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