船戸与一の一喝

「猛き箱舟」(上)巻 再読了 船戸与一はかつて「チャンドラーがハードボイルドを堕落させた」と題した一文で、「フィリップ・マーローはどんな人間に対してタフだったか?そこらのちんぴらやちゃちな悪徳警官を殴り飛ばしたことは何度もあるだろう。だが、権力の奥の院に鎮座している悪の構造のシンボルはもちろんのこと、その代行者に迫ろうとしたことは…

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窓の外の青空

いつから何かが間違ってここにいるという 不思議な前提に取りつかれちまったか そんな前提から 何か面白い展開があるだろうか 自らが懸命に生きてきた時間を切り捨て ありもせぬ真の自分の自尊心を癒すなどと そりゃあもう病気だろ 必然だったと威張る必要はないが 恥じ入ることもない すべては充分すぎるほどに充分だ…

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猛き箱舟 2

新年の深閑として浄らかな冷気の前に、荒ぶる一年が今はまだ凪の海のように静かに横たわっている 自らを救い出すことの不可能 故に水底で、来る年も来る年も泥の中を蟹のように這い回ってきたではないか 再び押し寄せてくるであろう奔流に頭一つ突き出し 濁流の波間に見え隠れする彼方の箱舟に取りつくことができるのか 柔(やわ)な箱…

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謹賀新年

新年明けましておめでとうございます 本年も宜しくお願い申し上げます ブログは2011年6月4日、狂人志願(第一声)以来、足掛け8年❗ 百年一日の如し ならば一日百年の如く生きるさ 皆様にとって今年が良い年でありますように 元旦 アロハを着たハンター 人気ブログラ…

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未来の記憶

それは未来の微かな記憶 宇宙の果てからやってくる電波のような もうなんにもなくなって 夢も希望も消え失せて それでも尚 屈辱に伏して生きているのは 未だ見ぬ明日の先に 燦めく微かな記憶を感じているから 帰らなきゃ 百万光年彼方の星雲の記憶か 転生前のあの世の残像か 家路につくように 明日に…

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敗北の峠を越えて

五木寛之「青春の門」第一部~第八部 高村薫「レディ・ジョーカー」(上)(中)(下) 同 「マークスの山」(上)(下) 同 「照柿」(上)(下) 辻仁成「海峡の光」 今年の読書の収穫はこんなものか だから、他の本はつまらない活字を追って無駄に時間を費やしていたということだ その他は? これこそ本題だが …

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ロングホール、ティショット

距離 3カ月、ロングホール ティショット 池越えのドッグレッグ 小雪混じりのアゲインスト 低めにティアップしたボールに ドライバーを手にしてアドレスする フェアウェイは左に傾斜して 白くかすみ、バンカーがいくつか見える 大きく右に曲った先のグリーン周りはおそらく 柔らかな陽が射す好天の下にあるだろう …

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無宿渡世と冥府魔道

つい昨日のような遥か昔、14才の俺を魅了していたものは中村敦夫『木枯らし紋次郎』の無宿渡世と、萬屋錦之助『子連れ狼』の冥府魔道だった どこかでだれかが きっと待っていてくれる 〈ててごとははごと〉 〈ごとごとと〉 雲は焼け道は乾き 陽はいつまでも沈まない 〈いっこくばしでまてばよい〉 冥府魔道に生き …

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気温6℃、19時、駅前

忘れ去られた街のイルミネーション 墓場のようなシャッター通りの寂しさを 中途半端な電飾が映し出す 戦後の一時期わずかに栄えたこの街の かつての賑わいを弔うかのように 白熱灯はLEDに変わり 青色発光ダイオードの鮮やかな青が 冷たく吸い寄せる 羽虫のように近ずくと 戦中の軍港は戦後の引き揚げ港として 多…

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気温10度の海と空

気温10度の海と空 そして北風が少々 風の先の晩秋の澄んだ空気と光の中に佇む何でもない風景に これはこれで魅力的だと思いながらも 爽やかさをいくらか超えた北風の体感に身をすくめ すぐそこにある透明な空気と光の中に同化できないもどかしさ では、いつになったらできるのか 自転車のペダルを踏みながら 肉…

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貨物列車と満月 2

反対方向のプラットホームに延々と連なるコンテナの貨車 同じ仕様の鉄の箱の中に何があってどこに行くのか ただの通りすがりの他者・・・ 人間の形をしただけの紛らわしい箱が 何の係わりもない業と煩悩を背負い込んだ箱が さも意味有り気に数え切れないほど俺とすれ違っていった 俺にとって何の意味もないつまらない箱 他…

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非常事態ー非常手段 2

一年前、生きていることが非常事態なら 生きて行くことは非常手段の連続であるはずだと 自らを奮い立たせ、また一つ住み慣れた街を後にした それから、日が昇り日が沈み 四季の移ろいと流れ行く雲を追いかけているうちに 再び、異界の天地に踏み出した時の透き通った青空と ぶるっとするような冷気に巡り合った 生きているか? …

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貨物列車と満月

貨物列車と晩秋の満月 誰も言葉を発しない 延々と連なるコンテナも それを積んだ滑車も連結器も車輪も 冷え冷えとして天空に佇む満月も 漠として見つめるこの俺も それぞれが多くの物語を孕みながらも 自らすり寄ろうとはしない 互いは行きずりの 交わることのない他者なのだ 行きずりの無限連続と孤独に 言…

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内なる高気圧

圧 内圧 内圧でパンパンになっているとき 人生は動く 内圧を極限まで上げるにはどうすりゃいいか 内圧とはそもそも何なのか 自転車のタイヤは空気が足りないと パンクし易くなる 内圧を失った人間を不抜けと言う (既に外圧に呑み込まれた死の一形態だと言えないか) 内圧を高めることは人生の最大の防御であり 攻撃に転…

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新しい明日

衆議院選挙終了 台風21号一過 民意の大風が吹き抜けていった いい頃合いだった 塵芥が残暑と共に吹き飛んで ようやく清々しい秋が訪れる 新しい明日 そうだ 明日は昨日じゃない 自分の在処も進む方向にも意味を見失い 虚無の吹き溜まりに溺れていた 人生は俯瞰したり全体を考えるもんじゃない 誰だ…

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名も無き駅のプラットホームで

宇宙は空間と時間と物質でできている だから 宇宙に存在する私も 空間と時間と物質でできている 私の人生とは 空間と時間と物質の関係の変遷であり 私とは 空間と時間と物質が化合した感情の記憶である 名も無き駅のプラットホームで電車を待つ すべての記憶が脱落し こうやって何十年プラットホームで電車を待…

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JAZZに癒されて

それは無限の悲喜劇を内包する大都会の夜景のように 深く切なく美しい 相反するものが極限にせめぎ合いながらも 調和と清寂を醸し出し 癒し昇華して 価値ある肯定へと誘うのだ 留まることをも肯定するかのような ピーター・ネロのピアノや ジョン・コルトレーンのテナー・サックス 秋だからだろうか ただ鞭打ち…

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雨空に吼える

大藪春彦「狼は暁を駆ける」 五木寛之 × 塩野七生「おとな二人の午後」読了 ある時、生来ひどい偏頭痛を持つ五木寛之は、人間はみな気圧の変化の影響を受けるということを発見した 女がその生理に月の満ち欠けや潮の満ち引きといった宇宙のリズムと同調して生きているように、男もまた高気圧や低気圧、天地の呼吸の中で肉体を収縮・弛緩させ…

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マークスの山

高村薫 「マークスの山」(上)(下) 読了 浮世と隔絶した急峻な岩山の頂 もう一人の自分がずっと昔から住んでいる そこが自分の唯一の居場所だし 唯一救われる場所だから 巷に対する無関心、無感動 厭世などと言いたくはないが つまらんのだよ 退屈と憂鬱と孤独 見下した既存社会に勝ち上がれない 自由自在…

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幽界・魔界

鰯雲流れる高く清々しい青空 夜は濡れる漆黒の深い闇 五感も冴える秋の好日・・だが 清々しい青空は何処まで行っても手にすることはできない 漆黒の深い闇は顕界に突き出した自らの一角を溶かし 闇そのものと一体になることができる 闇に流れ出す自分 闇に溶け闇に拡散する自分 氷山の如く光の下に現れた顕界が現住所なら…

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曼珠沙華

北方謙三 「火焔樹」 大藪春彦 「裁くのは俺だ」読了 台風18号が通り過ぎて行ったら いよいよ秋も本番となるだろう まとわりついた葛のような鎖を断ち切り 街を後にして山の奥深くに分け入った あれから一年 すぐそこにある彼岸の淵 危険区域にあるカラーコーンのように 真紅の曼珠沙華が姿を現す あ…

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歓びと憂鬱と

村上龍 「テニスボーイの憂鬱」(上)(下) 読了 涼やかな風と共に宵闇が流れ込み 鈴虫や興梠の鳴き声が宵闇を埋め尽くす 草木は黒々として月光に繁り やがて花を付け実を結ぶだろう 熱と水蒸気が晴れ上がると 露わな己れが取り残され現れる 覚醒した歓びと それ故の憂鬱 突然緞帳が上がり 繁りもせず花も咲…

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俺が見ているものが俺なのだ

自分とは何か それは自分が何と向き合っているかだ 地球にとっての太陽のように 電子にとっての原子のように 対象は自分の何であるかのすべてなのだ 自分の属性こそが自分の在りかであり 自分のあり様なんだ おまえが見ているものがおまえであり 俺が見ているものが俺なのだ 属性を離れて 無色透明中立中性的な自分…

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向き合うべきは対象なのだ

村上龍「長崎オランダ村」 読了 人の悩みとはその人のイメージと現実のギャップなんだよ 自分を意識する時は自分が自分じゃなくなっている時だろ 自分と対峙しなきゃいけない状況は厳しくて不幸なことなんだ 特に情報の少ない子供はそうならないようにしてやらなければならない 楽しいこと、夢中になることをいっぱい与えてやり 長く巣食う…

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風は吹いているか

浅田次郎 「壬生義士伝」(上)(下) 読了 巧い!感嘆しつつ読み進むが、何度も終わっていいところで終わらず、正直「巧い」のくどいほどの連続にしまいには少々むせ返りくたびれた。無骨な物語と思いきや、やがて幕末をも俯瞰する長い叙情詩となる。書き過ぎだと思うが如何に。過ぎたるは・・・ ハードボイルドと対極の小説だ つまらない男の…

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すべては傾いている

落合信彦 「そして帝国は消えた」 読了 すべては傾いている 繁栄と衰退 勃興と崩壊 上昇と下降 増加と減少 前進と後退 進化と退化 成長と老化 向上と堕落 すべては不安定な力学の中にあり 尚その運動を続けようとしている 諸行無常とはつまり すべては傾いているということだ 傾いていないものは…

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欲望と理性のコントラスト

村上龍「トパーズ」 読了 book off で100円で売られていた 好きな作家の読み残しを拾ってはみたが、時代は変わり当時は問題作であったとしても、今は古本ながら100円の値をつけられていることが至極妥当であると納得した バブルな時代の人間の本性をあぶり出したともいえるが、その告発された本性と対峙させられたところで、何がど…

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am5:00・August

夏至を過ぎて既にひと月と十日 水蒸気も大方晴れ上がり 僅かに傾いた夏が ようやくその輝く肢体を鮮明にして 静かに走り出す 荒ぶる狂気がその背中に 訥々と叡智を語り始める まだ誰も気づかないところで 日はもうだいぶ短くなり 自らの老いを気づかせまいとしてかのように その分猛烈な熱波を日中に降り注ぐのだ 光…

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レディ・ジョーカー

高村 薫 「レディ・ジョーカー」(上)(中)(下) 読了 新潮文庫の上、中にも下の最終巻にも解説はない。高村薫のこの作品に対する強烈なプライドが解説者の御託を不要としたか、あるいは受け手がいなかったか 凄まじい質量を内包した驚嘆すべき何かだった。被差別部落、在日、障害者等、多くの禁忌を含み、主要な登場人物がどういう訳かホモセクシ…

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巌流島の決闘

寝た たった三缶のビールで ひどく酔った 酔ったのか? 唯この世のくだらなさが増幅されるだけなのだ よくこんなものを長い間、有難くやっていたもんだ 一年ぶりに飲んだビールは 何処にも連れて行ってはくれなかった 素面(しらふ)でこそ耐えてこれた一年だったのだ 少なくとも酒の依存は切れていた 久しぶりのア…

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スーパー・サマーバケーション

夏休み入りをする 仕事はしばらくは休日登校か宿題くらいに考える 早朝からの強烈な陽射し、喧しい蝉の鳴き声 近所の公園のラジオ体操の音、不思議な静寂感 訳もなくワクワクする予感に満ちた輝く一日の始まり 朝顔、風鈴、西瓜、打ち水、花火 時は流れても 変わらない私の中の夏休みが蘇る 一点のストレスのシミもない ピ…

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束の間の青空

梅雨時分は毎年鬱々として散々ぼやいてきたが 今年は長雨が比較的少ないだけでなく 何故だかそれほど気分的に追い込まれていない システムとして細分化された情報処理最前線のオペレーションから 統合的というか未分化なアナログ的認識采配業務に変わって八ヶ月 非常手段の連続を経て 社会の中枢から若干傍流に外れはしたが 分裂した…

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諦念への叛乱

北方謙三 「絶海にあらず」(上)(下) 読了 海賊である 叛乱である そも藤原純友とは何者か 海とは何であるかを京に知らしめる 義憤の勇者なのか 時代の閉塞に風穴を開ける 豪胆な英雄なのか その結末にある史実の虚しさを 北方謙三が爽やかな希望に変える 叛乱は体制に鎮圧されたからこそ叛乱だ 体制は叛乱を鎮…

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辺境に死す

フロンティアとは辺境、最前線、最先端、新分野、未開拓地・・ 未だ価値の定まらない手をつけるにはおよそ無謀な荒野を云う 要は生き方は二つしかない 価値の定まったものへのアプローチか 価値の定まらないものへのアプローチかだ 価値の定まったものへのアプローチで最右翼は、 大学教授、高級官僚、医者、弁護士、政治家、一流企業幹…

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新しい未知なる連続

五木寛之 「青春の門」第七部 挑戦篇 同 「青春の門」第八部 風雲篇 読了 1967年6月から「週間現代」で連載が始まった「青春の門」は第一部〈筑豊篇〉が1970年に刊行されてから、〈自律篇〉〈放浪篇〉〈堕落篇〉〈望郷篇〉と続き、第六部の〈再起篇〉が1980年に刊行されるまで、70年代を駆け抜けるかのように刊行されてきた。そ…

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くぐり残した門

五木寛之 「青春の門」第五部 望郷篇 同 「青春の門」第六部 再起篇 読了 五木寛之が続編を新たに週間現代に連載している 埋もれていた古代の門柱が土の中から顔を出し、止まっていた時が動き出す くぐり忘れ、くぐり残した門 それ故に人生の道を違(たが)えたのではあるまいか 千里の荒野の果てに今再び「青春の…

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放たれたアンカー

五木寛之 「青春の門」 第三部 放浪篇 同 「青春の門」第四部 堕落篇 読了 存在とは何か 自らが存在するとはどう云うことか 誰もが心の奥底に持たされた一つの問い それは終生自らを脅かし続ける時限爆弾の秒針の音のようでもあり 命の炎を担保するまだ燃えやらぬ蝋燭(ろうそく)の芯のようでもある 本能…

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ホット珈琲とアイス珈琲

五木寛之 「青春の門」第一部 筑豊篇 同 「青春の門」第二部 自立篇 読了 長編小説を読みたいのだ 内なる舟、波動の一つを常に大海の沖に浮かべていたいのさ もちろん雄大で痛快なものに越したことはない だが、たいがいのものは既に読んでいて これはというものがない 五木寛之の初期のものはほぼ読んでいるが…

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マツバギク

浅田次郎 「五郎治殿御始末」 磯田道史 「龍馬史」 読了 十六才の夏の風景はいつもピンと張った憂いを含まない赤の花弁の華やぎであり その葉はポッテリと厚く水分を蓄えた瑞々しい緑色の福よかな台座を繁らせていた 夏の眩しい日射しの中で疑うことを知らない元気印のマツバギクの繁茂は いつしか私にとって「若さと繁栄の象徴」の風景とし…

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オーシャンブルー

丸山健二 「生きることは闘うことだ」朝日新書 読了 大昔に「アフリカの光」を読んで以来だが、悪い油で揚げた天ぷらでも食ったように彼の文章と文体にむせてしまった。あるいは彼は一部の人間に奇岩奇木の人と映っているのかもしれないが、ただの凡人であることはもはや疑いようもない。共感する処は確かにあるが、節くれだった仰々しく勿体をつけた言い回…

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仕上げの調律

北方謙三 「肉迫」読了 うん キレのあるビールを飲み干したような爽快感 最後の仕上げは北方謙三のハードボイルドだろ カフカもカミュもそうそう読んじゃいられない 絶望も虚無もすでに堪能させてもらって余りある わざわざ五月の日差しの下で さらなる毒を呑み干す酔狂もないだろう 肉体と行動の季節が来たんじゃないか…

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GWという断層

GWという断層を越えると 時間は一気に加速する すべては海底が隆起して台地になるように ステージを上げる 新緑の若葉はあれよあれよと 隆々たる黒光りした逞しい葉となり きのうまで北風に沈黙していた痩木の下に 今日は俄かな強烈な陽射しを遮断し 黒々として瑞々しい濃い影を落とす クラッカーが弾けるように …

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零地点からの脱出

フランツ・カフカ 「城」 読了 「わたしは、結構なキズをもってこの世に生まれた。それが、わたしのこの世への身支度のすべてであった」短編『村医者』のなかの言葉 いかなる世界にも所属できない異邦人であるということは、存在を喪失しているということ、存在の零地点に流刑されているということにほかならない。彼は、存在喪失という原罪を負うて生まれ…

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満ち潮と満ち陽

岩礁を覆い尽くし 伸びやかで艶やかな紺碧の海原が キラキラと太陽光を反射しながら 尚厚みを増して押し寄せてくる 力強い陽光もまた早朝に立ち 海の向こうから洪水のように溢れ もんどり打ってなだれ込んでくる 強烈な光線がくすんだ闇を掃討し 熱が死角に潜む邪気をも焼き尽くす 限りない岩礁と邪気に満ちた闇 打ちの…

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殲滅せよ

出撃せよ! そして殲滅せよ! ならず者には死を 調子者には破滅を 畜生には監獄を 愚者には絶望を アル中には肝硬変を ヤク中には肝臓癌を スモーカーには肺癌を 出撃せよ! そして殲滅せよ! 生かしちゃならない奴がいる 野放しにしちゃならない奴が 許しちゃならない奴がいる やれ!…

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沈黙の春

レイチェル・カーソン 「沈黙の春」 読了 草原にある一本の大きな楡の木 新緑の若葉が風に揺れる だが、そこには鳥のさえずりはない うごめく虫も憩う小動物もいない 楡の木を喰い荒す害虫を駆除する為の殺虫剤の散布が すべてを殺戮してしまったのだ 沈黙の春・・ いつの頃からかは忘れたが 春は駘蕩とした…

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陽を吸う

嗚呼、今年もまた何とかたどり着いた 幾千日の漂泊を経て、どうにかたどり着いた 凍てついた土の下で常に死と対峙し続けながら 忍従のみを強いられた気の遠くなるような長い日々 今日、否、今 硬い土を割ってすっくと頭をもたげた新芽のように うららかな陽光と頬をなで喉をくすぐる南風に出会った 陽を吸う あゝ、陽を吸う …

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さらば、荒野

北方謙三 著「さらば、荒野」 読了 薪(たきぎ)に臥せ苦い胆(きも)を舐める 男(人間)らしい様ではないか 飽食、艶福、守銭、媚び、惰眠の徒の何という汚らしさ こんな奴らに負けることが許されるだろうか 五欲煩悩に溺れる者は どこまでも溺れる者であり畜生とさして変わらないか 畜生以下である 柔らかな布団…

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小さな北風と細波(さざなみ)

西村寿行「青い鯱」 北方謙三「されど時は過ぎ行く」 読了 傲慢な老人の安っぽい感傷とナルシシズム かつて艦船勤務の軍医であり、今は一代で築き上げた大企業の総帥だから 誰もが黙してこの男に従うのか ハバナ産の葉巻を燻らしハイボールをスマートに呷り 札束を切りメルセデスを転がし ひとかどの男達に服従と苔むした美意識を強要す…

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六兵衛と火花

浅田次郎「黒書院の六兵衛」(上)(下) 又吉直樹「火花」 読了 黒書院の六兵衛とは何者か 気狂いなのかアホなのか 真面目なのか不真面目なのか 勝海舟や西郷隆盛、大村増次郎や木戸孝允のツッコミにもビクともしない 徳川慶喜でも公卿や天皇の間者でもない 本来の黒書院の六兵衛ですらない 江戸城は無血開城され、緊迫した中にも…

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