緊急事態宣言全面解除、そして梅雨入り

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終わりなき暗雲の下で、そぞろ司馬遼太郎の「燃えよ剣」を読めば
そこには眩しい白金のような言葉がつづられている

大政奉還がなされ、慶喜は将軍職返上を朝廷に申し出ている。いまや新選組は落日の幕軍最強の武人団となり、政治家近藤は毎日隊士団をつれ、京の諸所ほうぼうを走り回っていた。

近藤は政治家になりすぎた、と歳三はおもっている。(諸藩の情勢などどうでもよい。情勢非なりといえども、節義をたてとおすのが男であるべきだ)

こまったものだと、病床の沖田総司にこぼした

「おれは兵書を読んだよ」
「兵書を読むと、ふしぎに心がおちついてくる。おれは文字には明るくねえが、それでも論語、孟子、十八史略、日本外史などは一通りはおそわってきた。しかしああいうものをなまじすると、つい自分の信念を自分で岡目八目流にじろじろ看視するようになって、腰のぐらついた人間ができるとおれは悟った。そこへ行くと孫氏、呉子といった兵書はいい。書いてあることは、敵を打ち破る、それだけが唯一の目的だ。総司、これを見ろ」

ぎらりと剣をぬいた。
和泉守兼定、二尺八寸。すでに何人の人間を斬ったか、数も覚えていない。

「これは刀だ」
「総司、見てくれ。これは刀である」
「刀とは、工匠が、人を斬る目的のためのみに作ったものだ。刀の性分、目的というのは、単純明快なものだ。兵書とおなじく、敵を破る、という思想だけのものである」
「しかし見ろ、この単純の美しさを。刀のうつくしさは、粛然として男子の鉄腸をひきしめる。目的は単純であるべきである。思想は単純であるべきである。新選組は節義にのみ生きるべきである」

新選組はこれからどうなるのかという総司の問いに
歳三は、からからと笑った。

「どうなる、とは漢の思案ではない。婦女子のいうことだ。おとことは、どうする、ということ以外に思案はないぞ」
パチリと長剣をおさめた。乱世に生まれ乱世に死す、男子の本懐ではないか。

「なあ総司、おらあね、世の中がどうなろうとも、たとえ幕軍がぜんぶ敗れ、降伏して、最後の一人になろうとも、やるぜ」
           〈司馬遼太郎「燃えよ剣」(下)p80〜p86一部抜粋〉


ようやく緊急事態宣言全面解除に至ったが、一息つく間もなく梅雨入りし、酸欠的マスク生活のうえに、天上には分厚い雲が覆い被さって辛気臭い雨を降り落とす

何だろうね
あれもこれも何もかも

情勢非なりといえども
節義をたてとおす

えらい奴はいっぱいいた

たとえ世の中がどうなろうとも
自らの節義に忠実でありたい

見えざる腰間の剣のごとく

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この記事へのコメント

ママジャム
2020年06月14日 13:38
貴方のブログを読んだら、その本を絶対読みたくなります。
とても魅力的で情緒あふれる文面です。