東方荒野を振り返る

この大地(大脳皮質)にも、それからいろんなことが果てしなく吹き荒れたのだ
そして今は侵食し尽くされた荒涼たる平原のように静かにたたずむ
俺はシルクロードの考古学者のように、その脳裏に失われた古代を再現していく
枯木に花を咲かせるように、歩く端から瑞々しい古代が新緑の若葉のように蘇る
再読という予期せぬ事態が天地を震わし摂理を揺るがす
ついに人っ子一人訪れることもなくただ月日を経るごとに風雨に侵食され
無に帰するのを待つだけだった廃墟が、稲妻とともに若葉のように蘇る
先へ先へと急いでは来たが
今の俺自身に続くシルクロードを振り返る
未だ天竺の経典を手にしたわけでも
西方浄土にたどり着いたわけでもない
自らがそもそも何者で
何を商い、何を目指していたのかも
思い出せない
ただ、懸命に歩いた
押し流されるように、追い立てられるように
俺自身が駱駝であるかのように
それ自体が一つの摂理であったかのように
そして俺は
東方荒野を振り返る
沈む日を延々血反吐を吐きながらな追いかけて来て
ついに自らが何者であるかも忘れ果てたころ
何とはなしに東方を振り返ると
そこには幾万の経典の叡智を燦燦と溢れんばかりに降り注ぐ太陽が
歩いて来た遥なるすべてを照らし、そこが浄土であることを教えていた

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