ペテルギウスと紅梅

オリオン座の一角にある全天21の一等星の一つペテルギウスが2019年から急速に明るさを落としており、642光年先にある太陽の20倍の質量を持つ巨大な恒星の終末、超新星爆発の予兆ではないかと言われている

冬の夜空に気高く輝くオリオン座は、確かに記憶の中のそれとは違って精彩を欠いていた。中央の三つ星を囲む四方の一角、左上の星(ペテルギウス)が明らかに光を失っていたからだ

俺は十代の頃一度だけ凍てつく冬のオリオン座を見上げ、願をかけたことがある
642光年先のペテルギウスの瞬きもまた、威厳に満ちた勝者の輝きだったからだ
それは叶ったが、それ以降俺はオリオン座にどこか我が人生の証人であるかのような親しみを持ち続けてきた

そのオリオン座が冬の夜空の絶対的な威厳を失いつつあるという現実

それは虚空に刻んだ我が半生のわだちもまたペテルギウスのように輝きを失い、一切の真実が宇宙の彼方に消え去ることを意味していた

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絶望の闇夜にもオリオンのように勇ましい
ハードボイルドという美学

戦いのないハードボイルドはない
痛みのないハードボイルドはない
饒舌なハードボイルドはない
負けを認めるハードボイルドはない
理解されるハードボイルドはない
賑やかなハードボイルドはない
孤独でないハードボイルドはない

花鳥風月が風流の美意識なら
ハードボイルドは辺境の美学

花鳥風月が極楽なら
ハードボイルドは極地に違いない

花鳥風月が情緒的且つ受動的なら
ハードボイルドは肉体的且つ行動的だ

無意味な対比だとは思わない

花鳥風月は癒しと喜びをもたらし
無常と寂滅を恐れる

ハードボイルドは闇と絶望と孤独と悪に
正面から対峙することでこれを力に転換する

立春も過ぎた透明な陽射しの中、紅梅が咲き誇る一方で
オリオン座の一角ペテルギウスは、その一等明るい赤い瞬きに不穏な翳りを見せる


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この記事へのコメント

ママジャム
2020年02月12日 16:34
なかなか 興味深いですね