五分後の俺の世界

熱と光と湿度の濃密なスープ
熱帯のジャングルへの歓喜もいつしか失せて
戦果なき行軍の連日にやがて方向も目的も見失い
朝も昼も夜も同じような鬱蒼とした視界の中を
倦怠と疲労を引きずりながらただ黙々と歩いていた

このジャングルこそは徒手空拳の非力な反逆の徒にも
我が身を隠し乾坤一擲ゲリラ戦を挑みうる逆転の地ではなかったか

今俺が求めて止まない快適温度と開けた眺望の先には
既得権益を持つ体制の圧倒的な火力が待ち受けているだけだ


白旗を揚げポツダム宣言を受け入れたのが現実だと言うが
村上龍の「五分後の世界」には原爆投下、本土決戦を経て数十年経つ今も
降伏することなく地下に人口二十六万の日本を建国し、駐留する連合国軍を相手に
ゲリラ戦を続けるもう一つの五分後の世界と日本がある
ただ、「誇り」のために
七十数年を経て今なお戦い続ける五分後の世界がある
日本列島の地下を縦横無尽に要塞化した地下国家
人口は激減し、太陽もろくに拝めない
だが太陽に代わるほどの誇りがある


ゲリラが劣悪な環境に音を上げるようじゃ
ゲリラじゃないし、万に一つの勝ち目もない
夏の終わり頃には戦意を失い
ゲリラ戦しか活路のない男が日と熱と湿度を厭い
腹の中では白旗を立てて投降していた
何度も何度も同じことを繰り返してきた
まるで永遠の時に閉じ込められたかのように
太陽を厭い、誇りもまた捨てて
敗北感だけがおのれを支配していた


俺は炎天下の夏草に突っ伏し
つかの間意識を失っていたのかもしれない
不愉快な夢でも見たかのようにわずかに朦朧としていた

さあ、行軍の開始だ

生きても死んでも
俺の中には勝利しかない

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この記事へのコメント

ママジャム
2019年08月22日 09:57
なかなかやるじゃないか
朦朧の中にあっても、必ず目醒めよ!誇り高く。