アロハを着たハンター(原点を見た)

ハードボイルドの元祖 ヘミングウェイの「日はまた昇る」を読み終えた。

この作品は1925年 25歳のヘミングウェイが5人の友達に声をかけ 妻と7人でスペインのパンプローラ フィエスタを見物に行った時のことが かなり実話に近いかたちでベースになっているそうだ。
解説に小説の登場人物と ほとんどダブらせることのできる6人(ひとりはカメラ撮影)のカフェでの写真が掲載されている。 ベレー帽をかぶるヘミングウェイにも後年の印象からすると 少し意外な感じを受ける。

まあ それはいい。

小説自体は第一次大戦で夫を失った34歳の奔放な女ブレットと 彼女を取り巻く主人公ジェイクと作家仲間のコーン ビル そして現在のブレットの婚約者のマイク さらに闘牛士のロメロを加えた恋の物語・・なのだろう。

ジェイクは これも大戦の負傷がもとで性的不能になっている。ジェイクとブレットはかつて愛し合った仲であり 今もそうなのかもしれないが 恋の成就はできない関係である。
ブレットはジェイクへの想いを断ち切る為なのか 虚無と寂しさに狂っているのか ただの淫乱なのか知らないが 男を次から次に乗り換えて少しも悪びれない。

コーンというある意味常識的な男を別にして ジェイク ビル マイクは内心身もだえするほどに苦しかろうと 彼女の為すがままに彼女を許容する。
ゴールも出口もはなからない。 それは分かっていても 神のように彼女を許容しようとするジェイクですら 抑えがたい悲しみが 諦観の薄笑いの底から滲み出てくるのを抑えられない。
いつしか不毛な恋の耐久レースと化したフィエスタのなかで 常軌を逸したのはやはりコーンだった。

コーンは皆の前から消える。そして ブレットは新しい恋人ロメロのもとを自ら去り ジェイクのもとに帰ってくる。 
ジェイクは何事もなかったように受け入れる。

解説には
「無垢の大自然の中での鱒釣りに心癒され、フィエスタの踊りと酒に生きる歓びを実感し、闘牛士の研ぎすまされた反射神経の生み出す美に高揚する。そうしてジェイクはしだいに精神の荒れ地から抜け出ていく・・・」とある。

第一次大戦後の「神を見失った自堕落な世代」を映し出し その簡潔な文体 リアルな会話 個性的な登場人物
エキゾチックな舞台背景・・アメリカでは刊行と同時にセンセーションを巻き起こした。

ヘミングウェイは「一つの世代の消長など、どうでもいいことです」と書いた手紙を残している。
日がまた昇るのはジェイクや大戦後の荒廃した世代に というよりも その世代を踏み越えてその世代の屍の先に
日はまた何事もなかったように昇るであろう ということなのかもしれない。

暴力シーンは一つしかない。しかもその一つは主人公のジェイクがコーンに殴られて気絶するシーンだ。
最も悲劇的で救いのないジェイクに回想や泣き言は一言もない。身に起きた欠落を埋めるために人を傷つけたり征服しようとしたりといったそれゆえに歪んだものを見せない。ブレットの為すがままにブレットを許容し 彼女から逃げるわけでもなく追うわけでもなく 堂々と愛し続ける。

 何だろううね。

女も抱けない。 拳銃なんかどこにもででこない。 気の利いた殺し文句もない。
殴り合いには 殴られて気絶する。唯ただ酒を飲み 食い 談笑し 釣り 闘牛に熱狂する。

確かにに荒廃している。自堕落だ。 しかし 世界の誰もジェイクにはかなわない。

ヘミングウェイは別に凄い男を書こうとしたわけじゃないだろう?
しかし 神にしか演じられないような男が ここには書かれている。

虚無感が底流として小説全体を支配している。
それがフィエスタのワイワイガヤガヤ飲み食いの描写の連続とのギャップとなって だんだん終わりにいくほど苦しくなる。ジェイクの思いでもある。
ブレットはジェイクのもとに戻ってきたが ジェイクと結婚するわけじゃない。彼女はマイクと結婚するのだ。
 安直な結末は用意されてはいない。
それでも救われたような気になるのは ジェイクの諦観ともいえる男らしさだ。
     この一点でのみ すべては救われているのだ。

  やはり ハードボイルドの原点がここにあった。


{解説で ヘミングウェイが若き日のパリでの文学修行時代 毎日のように美術館を訪ねてセザンヌの絵に見入り 彼のように描写したいと念じていたというエピソードにも ハードボイルドの原点を知る拾い物をした。}




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